このところ俳句・俳句と騒いでいますが、いったいどんなの作ってるのかなと思っている皆さんに・・・
こんなんできました。
家族の知り合いの某自治体の職員の方が俳句コンクールを企画したんですが、応募が少ないと企画自体がボツになるので、とにかく応募してほしいと、用紙を10枚も送ってきました。でもね、俳句と縁遠い生活を送っている私たち、ほおっておこうかとも思いましたが、一時は企画部門に身をおいていた私には彼の気持ちがよくわかるので、なんとか応援してあげたいと思いました。
俳句ってなんだったっけ、5・7・5で季語を入れる。それだけではどうしようもないので、高校の古典で習った俳句を片っ端から思い出して、「古池や蛙飛び込む水の音」「菊の香や奈良には古き仏たち」・・・・悟りました(ほんと?)組み合わせなんだと。人がなるほどと思うような組み合わせかそれともあっと驚く組み合わせか。よしその線でいこう!こうして季節限定俳人パトラが誕生したのです。
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- 吉野山 桜の底に 青き空
- 語りたき 事様々に 老い桜
- 母の帯 締めていくべし 枇杷熟れぬ
- 土掘りて 昼寝の犬の 息浅し
- 月よ往け 始発列車の 来る前に
- 遠き山峰より閉ざす雪の闇
- 秋の空こぼさず掬う柄杓かな
- 今日生きて米とぐ我や寒の星
- はるばると来て一刷毛の紅葉かな
- 裸木に絡まる月や露天風呂
- 月欠けて空に刺さりし夜寒かな
- 翼竜が飛んでいそうな春の空
- 冬の蝶八階の窓横ぎりぬ
- 雲の影はだらに映し山眠る
- 入道がぬっと首出す霧の闇
- 一行を書きて閉じたる日記かな
- トンネルを抜けてくぐりて紀伊の国
- 麦秋の村横切りぬ郵便車
- かき氷はたと崩れて波高し
- 虫の音に乗りて眠りの岸に着く
- 冒険は子どもの仕事茗荷食む(はむ)
- 手袋がにぎりしめたる切符かな
- ふんぎりをつけて飛行機空へ飛ぶ
- あと5分眠らせてくれ蝉しぐれ
- 藤の花蜂従えて揺れにけり
- 雪深し笹が伸びする月の夜
- 鈍色(にびいろ)の水の重さよ冬の海
- 葉菖蒲の匂いかすかに仕舞風呂
- 捉えしは蜻蛉一匹暮れ近し
- 彼岸には彼岸花咲く母の墓
- 子と遊び光と遊ぶ春の海
- 糸杉に謀反の気配青嵐
- 単線に入れば紀の国海光る
- テレビ塔光る生駒嶺(いこまね)天高し
- 泡のごと光りて楠の花盛り
- 人々のひとりとなりて歳の市
- 母あらばいかにさばかん大ハマチ
- 真っ直ぐに行けば外つ国(とつくに)海光る
- 三味の音に紅葉かつ散る津軽かな(青森にて)
- 笛の音に山神遊ぶ月夜かな(青森にて)
- 若鮎の釣られてこぼす光かな
- コオロギのアリアを聴きて露天風呂
- 君逝きていずれが寂し花野かな(従兄に)
- まっすぐに咲きて動かず寒牡丹
- 北風に乾きしシャツの白さかな
- 老い猫のぬくもりを抱く梅見かな
- 紅葉散る山路やはめ絵まきしごと
- 粉雪の頬に残せし痛みかな
- 小町いて業平のいて花菖蒲
- 川光る里やあやめの背比べ
- 自転車が西日押し行く花野かな
- 願掛けてたどる山路や遅桜
- ひょうたんを磨く背中や月淡し
- 故里や桜紅葉の赤やさし
- 声出だすことなく一日寒牡丹
- 果たさざる約束のあり返り花
- あじさいや音なく受けるあめのつぶ
- あじさいの色様々に静かなり
- 母行きし道はどの道彼岸花
- 桜散れ散りてまだ見ぬ海を見よ
- くちなわとなりても生きよ我のため
- 我とともにメロスを待たんあきあかね
- 木犀の匂い立つ夜や誰を待つ
- いわし雲追いて一人の旅となる
- 秋寒や持てば重たき父の靴
- 真昼間の墓地静まりて桜散る
- 確かなる君の腕(かいな)や霧の山
- 残光になお山茶花の白さかな
- 初蝉を聞きて光のなかにおり
- しばらくはヒロインとなる月明かり
- 町ぬけて私一人の月となる
- 猫となり空に飛びたき月の宵
- 珠となる思い出もあり秋桜
- 北風を捕まえそこね白い波
- 夢というほどのものなく年の暮れ
- バラ一輪何が欲しいと聞かれたら
- われ一人月に真向かう山の宿
- 山の宿月なお遠く父恋し
- 大西日阿蘇群青に暮れんとす
- 一握り涼風給い山路行く
- 秘め事はありやなしやと蝉時雨
- 桐一葉天から降りしもののごと
- 落ちるあり加わるありて蝉時雨
- 蝉の声押し分けていく山路かな
- 雲の湧く村の祭りや昼の笛
- 秋風や手櫛にからむ髪細し
- 霧晴れてお山は色のシンフォニー
- 坂上る我が背に冬日力あり
- スカーフはパステルピンク春の旅
- 去年(こぞ)の問い今年答える年賀状
- 独り居の遠雷に耐え米を研ぐ
- 静けさに目覚める朝やぼたん雪
- 今日からは一人槐(えんじゅ)の影涼し
- 野良猫に場所譲られて日向ぼこ
- トタン屋根鳴らして昇る冬日かな
- 草刈りておと無き庭に赤とんぼ
- ちさき蝶小さき花に止まりけり
- 柘榴の実数確かめる帰り道
- 言い訳は聞かぬ背中や杜若
- 街路樹の影まろやかに春近し
- パンドラの箱開けし日や蝉時雨
- 朝の駅消える顔あり新年度
- 蝉時雨ひとすくいしてバスが出る
- 落ち葉焚き松には松の香りあり
- ビル風に耐えてけやきの若葉かな
- 稲の穂はうたたねほどに首をたれ
- まどろみに母確かめる団扇風
- 便りなき日々にも慣れて秋桜
- らんちゅうの肉喰う魚と知りにけり
- 金魚にも三枚目あり宙返り
- 周り見て靴先で割る薄氷
- 木枯らしに銀杏揺るがず天を衝く
- 夜の道コートにからむ犬の声
- 木枯らしの張り手一発止まる息
- 門を出て普通名詞になる私
- いつやらん工事途絶えて葛の花
- 影ゆれて足長手長川開き
- 水音にそろり踏み出す蛍狩り
- かんてきというものありき秋刀魚焼く
- 初めての町と思えず地蔵盆
- それぞれの空を見ており寒烏
- 星月夜主なき家の黒々と
- 水仙の花猛々し漁師道
- 陽だまりは歩みゆるめる遊歩道
- 紅梅や勝ち猫の位置定まりぬ
- 玄関へ出るにくじ引く寒さかな
- 街の川紙散るごとくカモメ飛ぶ
- シャボン玉色失いて宵近し
- 小春日やこの先知らぬ手まり歌
- 冬薔薇(ふゆしょうび)散りて女の宴の跡
- 紙ずもうなぎ倒したるミカンかな
- コスモスの畑に探す己が赤
- あくびする稚児も交じりて花祭り
- 風邪に伏す一人の部屋の闇重し
- 風やみてしばしまどろむ鯉のぼり
- 光縒る水面となりて春近し
- 鳴き交わし天極めたりもずの声
- 紗のベールまといて秋の空となる
- 蝉時雨クレーン空を撃たんとす
- 山の宿オリオンの位置確かめる
- 稲妻の空裂く宵や犬を抱く
- 寒蘭の匂い立つ日や月明かし
- 遠雷に老犬の耳落ち着かず
- 夕まぐれ山車追う子らの足袋白し
- スイトピー炎と燃えて恋終わる
- 山茶花の落ちいて光る山の道
- 我が影の切り絵となりて冬の道
- 木枯らしに向かう仁王の胸厚し
- 行列の稚児のあくびや春真昼
- 夜明かしの祭囃子や銀の月
- 休日も定位置に立つ朝の駅
- 息止めて北風の道歩みだす
- 杉の香を撒きてかけ行く風は少年
- 朱の紅塗りて出かける夏祭り
- 髪きりてうなじにあたる日の暑さ